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竹の階段

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REVOLVER - THE BEATLES

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ステレオは音を左右に振り分け立体感を出すが、モノは楽器の空間的配置による強弱が重視される。似ているようで印象の全く異なるものでわかりやすく例示すると、緻密に構成されたブルーノートのスタジオ録音ジャズCDがステレオ盤の良さを表現、ジャズライブと同じ良い意味ゴチャッとした一体的な聞こえを表現しようとするのがモノ盤、といえる。

9月にビートルズのアルバム「リボルバー」のモノ盤が初CD化された。なにが凄いかというと、これがまさにビートルズがこのアルバムを録音し聴いてOKを出した「そのもの」であるからだ。「リボルバー」は1966年にモノ盤で発売された。これはもちろんCDではなくLPレコードであるのでノイズが入っていた。1987年に初めてCD化されたが、これは細かい音の追加調整がなされないステレオ盤のみの発売で、それが22年間流通していたCDの全てだった。今回、初めてモノ盤・ステレオ盤共にリマスタリングされ発売された。

まずは分売されたステレオ盤CDを買った。音がハッキリとし、とてもクリアに鳴っている。今まで聴いていたCDとは、やはり違う。それを数日間聴き続け、耳に付いたところで、モノ盤を入手した。モノ盤は分売されず、限定ボックスのみの発売だったが、私は「リボルバー」以外は要らないので、ヤフオクで個人から手に入れた。ちなみにこのモノ盤は世界中で流通するもの全てが日本で生産されており、日本版・海外版に違いはなく同一である(紙ジャケットその他の印刷も全て日本の金羊社で行われた)。日本版には解説書の日本語翻訳・歌詞対訳が付属されている。

モノ盤を聴いてそれがステレオ盤とは全く違うことにすぐ気がついた。迫力のある低音が素晴らしく、高音もキンキンしておらず、生音にとても近い。これに比べるとステレオ盤はリマスター作業と音圧を上げたことにより音がクッキリしたけれども、電子音的な強調といった印象である。それにモノ盤には、ステレオ盤には入っていない音が細かに挿入されている。これがオリジナルなモノ盤と、その後力を入れずに作ったステレオ盤の違いか、とわかりやすかった。もう「リボルバー」のステレオ盤は存在しなくていいのではないかと思う。もちろんこれを聴くスピーカーは2つもいらない。

ビートルズ7枚目のアルバム「リボルバー」はメンバー4人の個性が初めてバランスよく表出したアルバムだ。ジョージ・ハリスンのシタール、とにかく眠いと唄うジョン・レノン、ポール・マッカートニーのポップな弦楽八重奏、大麻的なリンゴ・スターの黄色い潜水艦、今迄で一番長くレコーディングに時間をとったこのアルバムのレコーディング後、ビートルズは日本を含め最後のツアー活動を行う。ここでライヴでは披露できない表現域に辿り着いたのだろう。

最後にくだらないことを書くと、タイトル「リボルバー(REVOLVER)」は、ネット上(日本)では「日本ツアーの最中に日本の警官の回転拳銃からとったタイトル」と断言している発言が多いが、これは確定している事ではない。タイトルをEMIに伝えた電報の発信元が日本だったという噂もあるが、アルバム量産の期間的誤差の検証や否定的意見も多い。


2009年9月9日に全世界同時発売されたデジタルリマスターCD「リボルバー」2種
・ステレオ盤「リボルバー」((初回限定3ツ折パッケージ)※写真入英語解説書と、その日本語翻訳・歌詞対訳付き
・モノ盤「リボルバー」(限定BOXセット内)※上の画像は印刷が綺麗なこのモノ盤の完全再現ジャケットオモテ面


資料:「大人のロック」2009[夏]号(2009年7月16日発行/日経エンタテインメント!7月号増刊)
by otherpost | 2009-11-17 04:16 | その他