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竹の階段

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「姓氏家系大辞典」太田亮

人物の姓氏から家系を調べる時、誰もが開く書物がある。太田 亮(1884-1956)の名著「姓氏家系大辞典」だ。


先ず太田亮氏は全一冊の「姓氏家系辞書」を刊行。

「姓氏家系辞書」(全一冊/太田亮/磯部甲陽堂/1530頁/12円)
 ・初版:1920年10月25日発行
 ・二版:1921年2月15日発行
 ・三版:1927年9月5日発行
 ・四版:1930年4月25日発行


その後、新たな資料収集を重ね、これに大幅な増補をし全三冊の「姓氏家系大辞典」を刊行する。巻頭に「神代御系図」「皇室御系図」を付け足し(全134頁)、「氏姓家系」の部分は6675頁にまで増大した。

「姓氏家系大辞典」(全三冊/太田亮/姓氏家系大辞典刊行会/134頁+6675頁/各12円)
・第一巻:神代御系図、皇室御系図、ア-カ(1934年4月1日発行)※134頁&1-1822頁
・第二巻:キ-ト(1934年11月1日発行)※1823-4082頁
・第三巻:ナ-ワ(1936年12月10日発行)※4083-6675頁



ここから下は全て再発行である。

以下は出版社表記部分が違うだけで、全く同じもの。

「姓氏家系大辞典」(全三冊/太田亮/系譜学会/134頁+6675頁)
・第一巻:神代御系図、皇室御系図、ア-カ(1938年4月10日発行)※なぜか発行日記述が以下とてれこ
・第二巻:キ-ト(1938年2月10日発行)
・第三巻:ナ-ワ(1938年2月10日発行)


以下のものも内容は全く同じものであるが、全六冊に細分化されている。「神代御系図」「皇室御系図」部分は省かれている。総頁枚数が6674頁と1頁分少ないが、巻末の白紙頁を一枚詰めているだけで、内容は同一。第五・六巻は国民社からの発行となっている。 調べると1907年(明治40年)から続く磯部甲陽堂の出版書籍はこの第四巻で最後となっているので、きっと1944年に倒産したのだろう。

「姓氏家系大辞典」(全六冊/太田亮/各1000部限定/6674頁)
・第一巻:ア-オホク(1942年12月5日発行/磯部甲陽堂/6円)※1-1150頁
・第二巻:オホク-コクケ(1943年4月5日発行/磯部甲陽堂/6円)※1151-2276頁
・第三巻:コクサ-タケ(1943年7月5日発行/磯部甲陽堂/6円)※2277-3386頁
・第四巻:タケ-ニワカ(1944年3月25日発行/磯部甲陽堂/6円)※3387-4552頁
・第五巻:ヌ-マトヤ(1944年8月10日発行/国民社/12円50銭)※4553-5670頁
・第六巻:マトリ-ワ(1944年8月10日発行/国民社/12円50銭)※5671-6674頁



ここで終戦。太田亮氏の死去を挟んで、以降復刻となる。

以下も内容は全くの同一。よって頁枚数も同じであるはずだが、第三巻末尾のあとがき部分が新たに打ち直された(内容に変化はない)のと、太田亮氏のご子息による復刻への寄稿文が付加されているため、その分わずかに増えている。今までとは異なり三冊セットでの刊行。この角川書店版は近年まで版を重ねている(1995年版まで確認)。

「姓氏家系大辞典」(全三冊/太田亮/角川書店/134頁+6678頁/三冊一包35000円)
・第一巻:神代御系図、皇室御系図、ア-カ(1963年11月30日発行)
・第二巻:キ-ト(1963年11月30日発行)
・第三巻:ナ-ワ(1963年11月30日発行)



…とここまではいいのだが、詳細さや収録数では「姓氏家系大辞典」に遠く及ばない初期全一冊の「姓氏家系辞書」もなぜか復刻されることになる(廉価版的意味合いの刊行か)。内容は全くの同一。これも版を重ねる。

「姓氏家系辞書」(全一冊/太田亮/人物往来社/1530頁/8000円)
 ・初版:1968年5月10日発行
 ・二版:1971年発行


この後「姓氏家系辞書」は、「新編」として新たに刊行される。これは丹羽基二氏が内容に一部を追加し、文字を全頁打ち直しているので復刻ではない。頁枚数が減っているのは、文字の大きさ縮小により一頁辺りの収録項目数が増えたためである。なぜ完全版の「姓氏家系大辞典」ではなく、「姓氏家系辞書」のほうに一部追加し発行したのかが不思議だが、それはあとに書く。この「新編姓氏家系辞書」は近年まで版を重ねている(1994年版まで確認)。

「新編姓氏家系辞書」(全一冊/太田亮・著/丹羽基二・編/秋田書店/1357頁)
 ・初版:1974年12月15日発行
 ・二版:1976年発行
 ・三版:1979年6月30日発行


ということで、現在では角川書店版の「姓氏家系大辞典」と秋田書店の「新編姓氏家系辞書」が平易入手状態にある。「姓氏家系大辞典」には由来や説なども多く収録されており、読み物としても大変面白いものとなっている。ところで死後50年経ったということで著作権は切れたのであろうか。ただ単に変わった苗字を見つけたいだけの方には、とても高価だが約29万にも及ぶ数の苗字を正確に収録している最新の「日本苗字大辞典」(丹羽基ニ・編/芳文館)がよい。丹羽基ニ氏(1919-)は「にわ」という自身の苗字の特異性から幼少の時に貸本屋で「姓氏家系辞書」と出会い影響を受け、現在ではこの世界の第一人者となっている。先に「不思議」と書いたが、つまり自身の受けた感動から、全一冊という手頃な、そしてとっつきやすい「姓氏家系辞書」のほうに加筆し新たに「新編」を世に出したのだと考えられる。


参考までに、私の所有するものは角川書店版「姓氏家系大辞典」、1972年8月30日発行の第三版。各巻厚手のビニールカバーおよび箱入り。さらに三冊セットで箱に入っている。定価42000円。今回のデータは主に国会図書館と、資料の傷みからその貴重室の利用によるものである。

調べるに至った経緯としては、知人の「今手元に必要なのだが、人に貸したまま返ってこない。誰に貸したかも忘れてしまった。その「姓氏家系辞典」というものを捜してくれないか。」という依頼からだった。「かなり昔から使っている」と言っていたが「全一冊だった気がする」とも言っていたので、「新編姓氏家系辞書」、それも辞典は新しければ新しいほど良い、という先入観から1991年の版のものを入手した。しかし、聞いていたことよりも内容が薄く、とりあえず、その「新編姓氏家系辞書」を渡し、「これ以外に全一冊で姓氏家系を冠したものは無いし、存在しない。」と結論付けた。その後、知人の元に貸したものが返ってきたらしく、聞いてみるとやはり全三冊の「姓氏家系大辞典」であり、「三冊纏まってケースに入っていたので「一冊」という記憶違いをしてしまっていた。」ということだった。その後、私も上記の箱入り「姓氏家系大辞典」を入手し、再確認した。実際、国会図書館のものは全て箱に入っていなかったので、「存在しない」と結論付けるに至ったが、このどんでん返しはとても面白く、楽しませてくれた知人(白土三平先生)にとても感謝している。


※書影とちょっとした追記→「新編姓氏家系辞書」

by otherpost | 2007-10-13 04:32 | 資料