1972年から1981年の10年間に亘って青林堂から刊行された漫画単行本「青林傑作シリーズ」全28冊。非常に丈夫な造りで、本体と帯がビニールカバーで圧着されている。前年の1971年には安価な「現代漫画家自選シリーズ」の刊行開始と白土三平「カムイ伝」のガロ連載終了があり、その一年後の青林堂暗黒期に刊行は開始された。誰もが長井勝一の手腕を疑った豪華製本シリーズ。
発行者:長井勝一 ←本日生誕99年記念!
印刷:光栄印刷
製本:笠松製本
これは長井が貸本時代の幻想に意識下で倣ったシリーズだったのではないかと思っている。
かつて社会の飢えた兵隊たちは、夕刻になると所属の集団から解放され、みずからの意思で狩猟におもむく。本日の全財産を元手に棚をながめるが、薄暗い空間に並ぶ本たちの表情は全て同じく魅力的である。判断を誤っても保証は何もなく、決断はまったくのあてずっぽうとなる。帰り道、かるく表紙を開いたワクワク感。読み終えると心はいつのまにか見知らぬ世界にとらわれていた。
この感覚を長井はシリーズどれも同じデザインの表紙にすることで再現したのだろう。大勢の手をわたっても、まわし読みされても、問題のない頑丈さである。汚れても拭けばきれいになる厚いビニールカバーは帯を包みこんでいるため、本たちはいつまでも鮮度よくみえる。私たちが情報を基礎とする前のロマンを含有したシリーズ。これに協力した作家たちが以下になる。
手塚治虫:1928.11.3-1989.2.9/満60歳没
滝田ゆう:1931.12.26-1990.8.25/満58歳没
白土三平:1932.2.15-
永島慎二:1937.7.8-2005.6.10/満67歳没
松本零士:1938.1.25-
矢口高雄:1939.10.28-
上村一夫:1940.3.7-1986.1.11/満45歳没
川本コオ:1941.2.25-
真崎 守:1941.3.10-
村野守美:1941.9.5-2011.3.7/満69歳没
楠 勝平:1944.1.17-1974.3.15/満30歳没
青柳裕介:1944.12.4-2001.8.9/満56歳没
宮谷一彦:1945.11.11-
つりたくにこ:1947.10.25-1985.6.14/満37歳没
シリーズの内計7冊(1,2,4,6,9,13,21)が永島慎二のもので、次に多いのが村野守美の短編集で計5冊(5,12,17,20,24)、続いて上村一夫が葛飾北斎の生涯を描いた「狂人関係」全4巻(7,11,15,19)、滝田ゆうの東京下町物語「寺島町奇譚」全2巻(3,27)、残りの10冊は一作家一冊の構成になっている。
ガロ作家というよりは「COM」から始まりガロにも描きだした永島慎二、虫プロの村野守美、真崎守らがフィーチャーされている理由については、以下つげ義春インタビューに詳しい。雑誌「COM」は1971年末に廃刊した(1973年に一回復刊)。
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川本三郎
永島慎二さんとは、お付き合いありましたか?
つげ義春
数年前に亡くなりましたが、デビューの頃からの知り合いです。歳は同じですが、彼は十五歳ぐらいから、自分は十七歳ぐらいから描きだしているので、漫画の世界では、彼が二年先輩なんです。永島さんは阿佐谷に住んでいて、「ガロ」発行元の青林堂社長の長井勝一さんも阿佐谷にいましたから、その関係で「COM」がなくなった後に「ガロ」でも描くようになりましたが、それで「ガロ」を離れていった人もいましてね。
川本三郎
「COM」と「ガロ」とでは、作風が違いますよね。
つげ義春
何となくみんな永島さんを敬遠するようになったんです。長井さんは、表現にこだわるような作風をあまり理解できなかったようで、永島さんのような作風を好んでいたんです。その頃から、だんだん「ガロ」の「ガロらしさ」がなくなっていきましたね。
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※雑誌「東京人」2014年7月号より
以下、各巻詳細
●青林傑作シリーズ 1「漫画集 フーテン 上巻」永島慎二/1972年5月10日発行
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シリーズ黄色い涙/青春残酷物語 フーテン第一部 春の章
No.1:「COM」1967年4-10月号(虫プロ)掲載
No.2:「COM」1967年4-10月号(虫プロ)掲載
No.3:「COM」1967年4-10月号(虫プロ)掲載
シリーズ黄色い涙/青春残酷物語 フーテン第二部 夏の章
No.1:「COM」1967年11月号(虫プロ)掲載
No.2:「プレイコミック」1968年10月号(秋田書店)掲載(はたちの夜)
No.3:「COM」1967年12月号(虫プロ)掲載
No.4:「COM」1968年1月号(虫プロ)掲載
・著者近影(撮影:小目出卓)
・永島慎二氏の人と作品(文:手塚治虫)1967.10.30
・あの頃のこと(文:永島慎二)
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連作「フーテン」のシリーズ前半を収録。初期のものは表紙に「青林傑作シリーズ 1」表記なし。
●青林傑作シリーズ 2「漫画集 フーテン 下巻」永島慎二/1972年5月20日発行
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シリーズ黄色い涙/青春残酷物語 フーテン第二部 夏の章
No.5:「COM」1968年2月号(虫プロ)掲載
No.6:「プレイコミック」1969年12月号(秋田書店)掲載
No.7:「プレイコミック」1970年1月号(秋田書店)掲載
No.8:「プレイコミック」1970年4月号(秋田書店)掲載
No.9:「プレイコミック」1970年6月号(秋田書店)掲載
シリーズ黄色い涙/青春残酷物語 フーテン第三部 秋の章
No.1:「COM」1968年3月号(虫プロ)掲載
No.2:「月刊漫画ガロ」1969年11月号(青林堂)掲載(漂流者たち)
No.3:「プレイコミック」1968年7月号(秋田書店)掲載(星の降った夜)
No.4:「プレイコミック」1970年7月号(秋田書店)掲載
・その後のこと(文:永島慎二)1972.3.10
・拝啓 読者どの(文:永島慎二)1970.4
・読者のみなさん(文:永島慎二)1970.7.17
・非小説 白菊 永島慎二のひとつの世界より:「刑事」1960年掲載
・永島慎二全作品リスト
・永島慎二全著書リスト
・スクラップ 年代順アルバム(近影写真26点)
・21世紀の精神分裂症患者(文:永島慎二)1970年5月
・いつも本気であると言うこと(文:東京ムービー演出家 遠藤政治)
・新宿のジプシーたち(文:思想の科学会員 渡辺一衛)
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連作「フーテン」のシリーズ後半を収録。初期のものは表紙に「青林傑作シリーズ 2」表記なし。
●青林傑作シリーズ 3「寺島町奇譚」滝田ゆう/1976年4月20日発行
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寺島町奇譚
どぜうの命日
ぎんながし
おはぐろどぶ
げんまいパンのホヤホヤ
日和下駄
エジソンバンド
花あらしの頃
うぬぼれ鏡
萬古屋事件始末
・阿呆陀羅にゃんにゃん(文:滝田ゆう)
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連作「寺島町奇譚」のシリーズ前半を収録。カラー口絵2点は辰巳義興・渡部郁子所蔵。現代漫画家自選シリーズ5「ぬけられます-寺島町奇譚-」(1971年12月10日発行)との重複を避けた内容。のちに表紙絵の異なる「青林傑作シリーズ 3」表記の改訂版(1980年4月15日発行)となり、「青林傑作シリーズ 27」に収録の「うぬぼれ鏡」と「萬古屋事件始末」は省かれる。くわしくは下の「青林傑作シリーズ 27」の解説で述べる。
●青林傑作シリーズ 4「漫画集 黄色い涙 若者たち」永島慎二/1976年8月5日発行
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黄色い涙
小さな城
晩秋
冬の恋
春の吹雪
初夏と汗
美酒の香り
太陽と海と悲しみと
ある恋の物語
シェンシェイの場合
望郷
春告鳥
・NHK銀河テレビ小説「黄色い涙」より(写真3点)
・「黄色い涙」は私の代表作です(文:元NHKディレクター 鈴木基治)
・飄飄と生きる事のなんと難しい事か…(文:漫画家 むらおか栄一)1976.5.28
・永島さんというのはきっと恋惑いの人にちがいない(文:俳優 森本レオ)
・恋人・永島慎二(文:ぽえむチェーン主宰者 山内豊之)
・「若者たち」テレビ化の頃(文:永島慎二)
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連作「フーテン」のシリーズ後半を収録。初期のものは表紙に「青林傑作シリーズ 4」表記なし。
●青林傑作シリーズ 5「だめ鬼」村野守美/1976年10月20日発行
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だめ鬼(原始民語大嘘話その壱)
せんぷうき
パッチン(村野「英雄伝」より)
撃沈
いきんぼ
鯉のジョーズ
ハイッ・・小学一年生
悪党狂騒曲
OH!GOD ニューヨークの神様
・優しい豪傑(文:漫画アクション編集長 堤任)
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短編集1/5。
●青林傑作シリーズ 6「その場しのぎの犯罪 第一部」永島慎二/1977年4月10日発行
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その場しのぎの犯罪 第一部
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●青林傑作シリーズ 7「狂人関係 第一部」上村一夫/1977年4月25日発行
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狂人関係 第一部
其の壱
其の弐
其の参
其の四(寒椿)
其の五(お七 七草)
其の六
其の七(花だより)
其の八(母 前編)
其の九(母 後篇)
其の十(お栄のこと)
・風狂の人(文:久世光彦)
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1/4。
●青林傑作シリーズ 8「青春相続人」宮谷一彦/1977年6月25日発行
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悲しき天使
夕凪船長
ワンペア プラス ワン・・・・・
雪原より遠くはなれて
ぬくもり
滑走路
青春相続人
はっぴぃえんど
・ライナーノート(文:宮谷一彦)1977.5.5
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短編集。
●青林傑作シリーズ 9「花いちもんめ」永島慎二/1977年8月30日発行
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花いちもんめ(カラー扉)
その周辺
北斗七星
残光
ぼくの手塚治虫先生,
この街あの頃
・永島慎二とその仲間
・街々のキッサ店にたくさんのダンさんがいる様な気がして……。(文:フォークシンガー 三上寛)
・永島慎二に聞く(聞き手:関口シュン)
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短編集。
●青林傑作シリーズ 10「白い伝説」真崎守/1977年9月15日発行
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白い伝説(原作:小泉八雲)
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●青林傑作シリーズ 11「狂人関係 第二部」上村一夫/1977年11月5日発行
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狂人関係 第二部
其の十一(まどろみ)
其の十二(鎌鼬)
其の十三(雛人形夢反故裏)
其の十四(屁熊)
其の十五(花筏)
其の十六(春と修羅)
其の十七(蕗味噌)
其の十八(鬼哭)
其の十九(はるかぜ地獄篇 前篇)
其の二十(はるかぜ地獄篇 後篇)
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2/4。
●青林傑作シリーズ 12「泥沼 どぶだめ」村野守美/1977年12月10日発行
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泥沼 どぶだめ
残桜
地蔵峠
昇り凧
しま
関白さん
カタカタ
ちんちりりん
残火 ざんか
東京日日新聞より しゃうぢきしゃふ
・K君へ(文:漫画アクション編集長 堤任)
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短編集2/5。
●青林傑作シリーズ 13「港野郎にきをつけろ!」永島慎二/1978年2月15日発行
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港野郎にきをつけろ!
夜歩く鉄人(ニッポンGメン星方行助の冒険より)
・今はむかし・・・・(文:永島慎二)1978.1.11
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●青林傑作シリーズ 14「親子知讃歌」松本零士/1978年3月20日発行
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親子知讃歌 おやしらずさんか
昆虫国漂流記
・零士さん(文:野口文雄)
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●青林傑作シリーズ 15「狂人関係 第三部」上村一夫/1978年5月10日発行
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狂人関係 第三部
其の二十一(世間噺)
其の二十二(新宿遊侠伝)
其の二十三(夜鷹蕎麦)
其の二十四(お七炎歌)
其の二十五(十三夜)
其の二十六(風の炎)
其の二十七(花道)
其の二十八(お七涅槃図)
其の二十九(冥途)
其の三十(骨違い)
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3/4。
●青林傑作シリーズ 16「よさこい節」青柳裕介/1978年6月20日発行
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与作とエンコウ
○○○あ 微笑んでくれた
なきやの留さん
湯の町
月夜のれんげ畑
よさこい節
ヤンーレエ祭だぁ
赤ふんどし寝話
どさんせん(土讃線)
男歌
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短編集。
●青林傑作シリーズ 17「秘戯御法 ひぎぎょほう」村野守美/1978年7月20日発行
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四ッ目美濃屋
蜘蛛
絵師
ペイコ
淫魔寺
琴
火の用心
秘戯御法 ひぎぎょほう
・鬼子母神(文:村野守美)
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短編集3/5。
●青林傑作シリーズ 18「おせん」楠勝平/1978年8月15日発行
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殿さまとざらざらした味
いざかや
おせん
どろ棒とこん棒
茎 前篇
茎 後篇
ふじが咲いた
あらさのさー
ゴセの流れ
彩雪に舞う
・楠勝平論ノート(文:石子順造)
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短編集。楠勝平は1974年3月に亡くなっているので、この本のみ作者没後の刊行。青林堂は1975年3月に500部限定の追悼本「楠勝平作品集」(3200円)を発行し、これは同じA5サイズで1200円なので、その廉価版の意味合いの刊行でもある。収録内容は「名刀」が「殿さまとざらざらした味」に入れ替わったのみであとは同じ。
●青林傑作シリーズ 19「狂人関係 第四部」上村一夫/1978年9月20日発行
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狂人関係 第四部
其の三十一(蔦屋重三郎の切腹)
其の三十二(少し寂しい 前篇)
其の三十三(少し寂しい 後篇)
其の三十四(負けいくさ)
其の三十五(眠れ茱萸の樹)
其の三十六(眠れ茱萸の樹 後篇)
其の三十七(人情噺魚屋島吉 前篇)
其の三十八(人情噺魚屋島吉 後篇)
其の三十九(名月記 前篇)
其の四十(名月記 後篇)
其の四十一(抜け雀)
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4/4。
●青林傑作シリーズ 20「媚薬行 びやくこう」村野守美/1978年10月20日発行
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四ツ目屋
小塚ッ原異聞
四ツ目屋始末
三匹の山師
盲妹考
雪風老人
春雷
無情
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短編集4/5。
●青林傑作シリーズ 21「その場しのぎの犯罪 第二部」永島慎二/1978年11月20日発行
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その場しのぎの犯罪 第二部
・そのばしのぎをおわります.(文:永島慎二)
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●青林傑作シリーズ 22「ブルーセックス」川本コオ/1979年1月20日発行
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忘れな橋
記念写真
すっぱい季節
未鬼子
少女のいる風景
砂の季節
どろんこマーチ
小さな旅
熱い夏の予感
FLYING OFFふらいんぐ・おふ
・「君達男の子・ゴー・コオ。」(文:歌手 三上寛)
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短編集。
●青林傑作シリーズ 23「六の宮姫子の悲劇」つりたくにこ/1979年3月15日発行
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六の宮姫子の悲劇
ジンロク
マダム・ハルコ
ナンセンス
アンチ
音
女
MAX マックス
MONEY
ジャムの壺
彼等
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短編集。
●青林傑作シリーズ 24「龍神」村野守美/1979年6月5日発行
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龍神
ブンブン
影鬼
迷い子石
てっぽう
ガラランラン
いも
もののふの道
・土竜 もぐら(文:村野守美)
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短編集5/5。
●青林傑作シリーズ 25「サロメの唇」手塚治虫/1979年8月5日発行
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ペーター・キュルテンの記録
サロメの唇
イエロー・ダスト
最上殿始末
火の山
・ちかごろ、手塚さんについて感じていること(文:まんが家 真崎守)
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短編集。
●青林傑作シリーズ 26「傀儡がえし」白土三平/1979年11月25日発行
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ざしきわらし
赤い竹
鬼
異変
傀儡がえし
粉忍
無三四
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短編集。このガロ創立者白土三平本のみは口絵もカラーも寄稿も、サービスなしのいさぎよさ。この単行本発行の打診で香田明子さんが白土に会いに行った折「第二部はまだ出ないんですか」と聞き、白土は「出す時期を逃してしまった」と答えている(コミックボックス1996年5月号)。
●青林傑作シリーズ 27「ぬけられます」滝田ゆう/1980年1月10日発行
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寺島町奇譚
ぬけられます
定九郎の口紅
萬古屋事件始末
うぬぼれ鏡
長い道
あしがる a poor man
しずく
死に急ぎの記録
マイ・ゴーストタウン
彼女の世界
ラララの恋人
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連作「寺島町奇譚」シリーズの後半および、こうの史代のバイブルである全8頁の名作「長い道」を含む7つの短編作品を収録。収録内容は現代漫画家自選シリーズ5「ぬけられます-寺島町奇譚-」(1971年12月10日発行)と重複するものが多い。くわしくは「あいつ」とちょんまげオムニバス「うわさの系譜」12作品(星の流れ/からまわり/幕尻/まきぞえ/女の宿/同志諸君/参加/まるごし会談/涙の連判状/隠密無情/さんりんぼう/本番)が省かれ、寺島町奇譚の「萬古屋事件始末」「うぬぼれ鏡」が含まれた。「萬古屋事件始末」「うぬぼれ鏡」は先の「青林傑作シリーズ 3」と重複しているが、直後に発行された「青林傑作シリーズ 3」の再版本(改訂版)で省かれた。おそらく、この本は現代漫画家自選シリーズ5と同じ内容で発行する予定だった(カラーの口絵2枚も同じ)ものが、先の分厚い「青林傑作シリーズ 3」のページ数削減をしたかった考えがあり、このような収録内容に変更されたものと思われる。ちなみに滝田ゆう漫画館第5巻「ネコ右衛門太平記」(1992年7月15日発行)には表題作「ネコ右衛門太平記」のほかにオムニバス「うわさの系譜」12作品と「しずく」が併載されている。
●青林傑作シリーズ 28「チライ・アパッポ」矢口高雄/1981年1月15日発行
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チライ・アパッポ
いろはとんぼ
ひとつねた
長持唄考
狐の棲む里
みなぐろ
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短編集。カラー口絵なし。「チライ・アパッポ」は巻頭8枚が2色カラー。ガロ掲載の初期作品「ひとつねた」「長持唄考」「狐の棲む里」「みなぐろ」が、一切改稿なしに収録されている(つまりガロと同一)。「月刊漫画ガロ」1969年4月号に発表されたデビュー作品「長持唄考」は、この本と「木造モルタルの王国」(1984年12月1日発行)に収録されているのみであるが、1972年にリライト版の「長持唄裁判」、1994年にさらなるリライト版の「長持唄考」が発表されている。
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