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竹の階段

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血笑鴉 (けっしょうがらす)

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※隔週誌「現代コミック」1970年5月14日号(第9号)より、水木しげる画の美しい表紙と、「血笑鴉」連載第三回扉
※右:作中コマ(第1話より)

横山光輝作品「血笑鴉」全24話。じつは横輝作品は中国大陸モノ以外はあまり好きではないが、この「血笑鴉」は別だ。長編ながら一話一話が短編的な話になっている醜男版「カムイ外伝」なのである。主人公の技の名が「霞の小太刀」(第22話以降は「霞み切り」)なのも面白い。「ワタリ」にならって「赤影」を描いたように、この「血笑鴉」にもそういった気持ちがあったのかもしれない。いやそんなことを抜きにしても、この作品は大変な名作なのである。しかし連載が「月刊少年チャンピオン」に移ってのもの(第21-24話)はその醜男らしさが消え、性格も丸くなったため面白くない。横山光輝自身、「明日の希望もなく、醜男で羞恥心もない主人公など、少年誌の主人公には不向きだった」と語っており、「月刊少年チャンピオン」に移ってからたったの5回で描くのをやめている。それでも作者が未練を持つほど、第20話までのものはとても素晴らしい。

主人公には過去の記憶が無い。知らず会得していた職人技で日々の糧を得、土地土地を渡り歩き生きている。その腕を必要とする者達の人生と自身の過去。主人公「鴉」は自分の今のみを生き、風のようにさすらう玄人の殺し屋である。

連載
第01-02話:「現代コミック」1970年4月9日号、4月23日号、5月14日号(第1話は2回に分けて掲載)
第03-20話:「週刊漫画アクション」1970年7月9日号-1972年1月27日号(月に1回ずつの掲載)
第21-24話:「月刊少年チャンピオン」1977年1月号-5月号(第23話は2回に分けて掲載)

単行本:今までに全6種(計10冊)刊行された。以下目次と詳細。

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●漫画アクションコミックス「血笑鴉」第一集(1971年12月1日発行/双葉社)
 第03話:眼には眼を
 第04話:野獣剣法
 第05話:賽の目
 第06話:棘ある花
 第07話:殺し屋仁義
 第08話:兄弟子
 第09話:地獄谷
 第10話:臆病鴉
 第11話:石懐炉
 第12話:家老と娘
 第13話:父と子(その一)
 第14話:父と子(その二)
 第15話:血染鴉
 第16話:陰と陽
計14話収録。「週刊漫画アクション」連載のもの前半を収録。雑誌形態。
巻頭にフルカラー4頁と二色カラー16頁。第二集は発行されず。


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●ハードコミックス「血笑鴉」上巻:流転の章(1975年8月10日発行/大都社)
 第01話:名無し鴉
 第03話:目には目を…
 第04話:野獣剣法
 第05話:賽の目
 第06話:棘ある花
 第07話:殺し屋仁義
 第15話:血染鴉
 第10話:臆病鴉
 第16話:陰と陽
●ハードコミックス「血笑鴉」下巻:回帰の章(1975年9月10日発行/大都社)
 第12話:家老と娘
 第13話:父と子(一)
 第14話:父と子(二)
 第17話:道場破り
 第18話:実りの秋
 第19話:群狼組
 第09話:地獄谷
 第08話:兄弟子
 第11話:石懐炉
 第20話:目かくし殺法
計19話収録。収録順がシャッフルされている。書影の横のものは各巻口絵。
単行本一冊の頁枚数的な都合かと思われるが、第2話が収録されていない。
当然、これより後に発表された第21-24話も収録されていない。



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●アクションコミックス「血笑鴉」第一巻(1984年9月18日発行/双葉社)
 第01話:名無し鴉
 第02話:仇討ち
 第03話:目には目を
 第04話:野獣剣法
 第05話:賽の目
 第06話:棘ある花
 第07話:殺しや仁義
 第08話:兄弟子
 読切短編「坐っていた男」(1970年/本編とは関係無し)
●アクションコミックス「血笑鴉」第二巻(1984年10月19日発行/双葉社)
 第09話:地獄谷
 第10話:臆病鴉
 第11話:石懐炉
 第12話:家老と娘
 第13話:父と子(一)
 第14話:父と子(二)
 第15話:血染鴉
 第16話:陰と陽
 第17話:道場破り
 読切短編「愛執」(1969年/「血笑鴉」を描くきっかけになった作品)
●アクションコミックス「血笑鴉」第三巻(1984年11月19日発行/双葉社)
 第18話:実りの秋
 第19話:群狼組
 第20話:目かくし殺法
 第21話:かくれ鴉
 第22話:奉納試合
 第23話:縄張りあらし
 第24話:因果はめぐる
 寄稿:『血笑鴉』と私(横山光輝)2頁
 寄稿:『血笑鴉』と横山時代漫画(瀬田克巳)3頁
全話収録。短編作品「愛執」が追加されているのと、作者解説付きのこの全三巻が一番のお奨めである。
寄稿内の初出記述(「現代コミック」部分)に誤りあり。

この後、短編二編を省いたアクションコミックスDX「血笑鴉」全二巻(1987年発行/双葉社)も刊行される。
アクションコミックスDX版は、第一巻1987年7月27日発行、第二巻1987年8月20日発行。初出リスト付き。


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●講談社漫画文庫「血笑鴉」全一巻(2001年6月12日発行/講談社)
 第01話:名無し鴉
 第02話:仇討ち
 第03話:目には目を…
 第04話:野獣剣法
 第05話:賽の目
 第06話:棘ある花
 第07話:殺し屋仁義
 第08話:兄弟子
 第09話:地獄谷
 第10話:臆病鴉
 第11話:石懐炉
 第12話:家老と娘
 第13話:父と子:その一
 第14話:父と子:その二
 第15話:血笑鴉
 第16話:陰と陽
 第17話:道場破り
 第18話:実りの秋
 第19話:群狼組
 第20話:目かくし殺法
 第21話:かくれ鴉
 第22話:奉納試合
 第23話:縄張りあらし
 第24話:因果はめぐる
 寄稿:『血笑鴉』を読んで(大野幸太郎)3頁
全話収録。殺陣師による解説付き。第15話「血鴉」が「血鴉」になっているミスあり。全704頁、定価1000円。一冊に全話収録とはいえ文庫本でこの厚さはちょっと読み辛い。帯の「単行本未収録作品を網羅した完全版」というのは嘘で、理由は当初、大都社ハードコミックス版(全二巻)を一冊にまとめて出すつもりだったらしいが、これに第21-24話を付け足す話が出(第2話もだろう)、この分厚い文庫本を売るための営業戦略で苦しい言葉の誤魔化しをコピーに使ったのだそうだ。私はこれに騙され、買ってからさっそく全頁双葉社アクションコミックス版(全三巻)と見比べたが、当然期待した未知の頁なぞは一切存在し無く、ガッカリした。それでもこの全話まとめての復刻はとても嬉しかった。
現在、電子書籍版としてeBookJapanサイトからも購入することが出来る(4つのファイルに分割、各315円)。


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●KPC「血笑鴉 必殺!暗殺請負い屋 編」全一巻(2007年6月発行/講談社)
全話収録。コンビニ本。680円。


以上。

ついでに「現代コミック」1970年5月14日号(第9号)の内容を記録する。

P1:表紙・水木しげる ※フルカラー
P3-5:「娼婦洋子」及川正通 ※フルカラー
P6-30:「灰色の男(第一部)」小島剛夕 ※フルカラー1頁・二色カラー8頁
P31-46:「COLD・SWEAT -冷い汗-」エモリ・AI
P47-62:「天狗」辰巳ヨシヒロ
P63-67:「そしてじいさんは」黒鉄ヒロシ
P68-69:「劇画in劇画 7ふっきる」さいとう・たかを
P70-71:「ゲリラ時代」夏堀正元・藤本蒼
P72-73:「雑学自主ゼミナール」
P74-75:「恐怖の性教育」阿刀田高・加藤実
P76-78:「暗い夜の街ジャカルタ」
P79-82:「SILENT SHOCK -わからない漫画- 9」水木しげる
P83-98:「忘れぬ夢」池上遼一
P99:「イヤーン'70」小島功 ※フルカラー
P100:「C・Cコレクション」アントニオホンダ ※フルカラー
P101-103:「MERMAID」長尾みのる ※フルカラー
P104-119:「繁一のブルース(第二話)」樋口太郎 ※フルカラー1頁
P121-124:「IMAGE COMIC 5野次馬」石森章太郎
P125-133:「日本ヤンチャ派」高橋純司
P134-135:「あっとためになる絵本」いちだぱとら
P136-137:「パロディー観相学入門」テディ片岡・平沢茂太郎
P138-140:「行動派1870年の場合(最終回)テロリスト伊藤博文」岡田稔・永美ハルオ
P141-164:「血笑鴉(第三回)」横山光輝
P165-170:「寸劇天城山」杉浦茂
P171-185:「マッド・マシン」小井土繁一
P189-196:「にわか雨」東田健二 ※二色カラー


「次号巻中に小島剛夕「灰色の男」中編登場」と書いてあるが、この雑誌で発表された痕跡がないので、多分この号で雑誌自体廃刊したのだろう。表紙の「新連載 血笑鴉 横山光輝」「好評連載 ガラスの城の記録 手塚治虫」というコピーは嘘。以前の号のものをうっかり載せてしまったものだと思われる。小井土繁一は赤目プロでも描いている。この雑誌は1970年1月8日号の創刊以来二週間に一冊ずつ刊行された。


その2
by otherpost | 2009-05-28 20:10 | その他